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2021年 9月 26日 エッセイから始まる古典入門 ~日本史の魅力再確認の巻~
外出先で時間が空くと私は必ず本屋に入ります。ただで暇つぶし(立ち読み)ができて運がよければ座れるから、素敵な場所ですよね。
先日立ち寄った本屋で、「今話題の本」のコーナーに向田邦子のエッセイが特集されていました。この店独自のおすすめかと思ったら、その後寄った神保町の三省堂でも、吉祥寺キラリナの啓文堂でも、うちの近くの個人営業書店でも同様に特集されていたので世の中全体のブームらしい。
私はいつも読書と言えば詩、特に現代詩とその批評ばかり選り好むので、たまには全く違うジャンルの本も読もうと思い、キラリナ7階で向田邦子ベスト・エッセイを購入、帰りの電車から早速読み始めました。
夢中になって読書した経験は中学生の時に一度だけ、司馬遼太郎の「国盗り物語」全4巻を一晩で読破したきりです。そのとき以来の集中力で向田エッセイに没入してしまいました。
放送作家だけに話の構成が巧妙でどんどん引き込まれてしまうのです。面白い原因は構成だけではありません。しばしばオタク的に自分の好きなものを熱弁してくれるのです。例えば彼女は水ようかんが大好物でその味、形、食べ方、食べるときに流すべき音楽まで解説してくれます。私も水ようかんは好きですが、そこまで思いを馳せたことがなかったので(あぁたしかにそういう楽しみ方もあるのかもしれない)と共感してしまうのです。
なるほど人が面白いと感じるときは、すなわち共感を抱いた時なのかもしれません。向田邦子は自分の経験や趣味を詳細かつ巧妙に共有してくれるので、読者に経験がなくてもあるある!と思うことができて面白みを感じるのだと思います。
さて、自分もなるべく面白いブログを書きたいのですが彼女ほど熱弁できるものがありません。詩は好きですがよく考えてみれば現代詩ばかり中途半端に読んで古典は食わず嫌い、これではただのミーハーではないかと反省するばかりでございます。万葉集や新古今和歌集だって詩集なのだから読んで然るべきだし、古典から現代詩まで読んだ上でわかることもたくさんあるはず。
というわけで古い物から順番に読んでいくことにしました。最古の詩集は万葉集ですが更に古い書物に古事記があります。詩集ではありませんがどうせなら一番古いやつから読みたいと思いトライ!、、、しかし原文はさすがに無理なので阿刀田高の「楽しい古事記」でエッセイ調の物を読破!めっちゃ面白かったです。
古事記はイザナギ・イザナミの大八島創生から推古天皇までのお話ですが、推古天皇あたりまでくると日本史の教科書で度々お目にかかる名前がちらほら。
受験生時代に使っていた日本史資料集を引っ張り出してきて、「楽しい古事記」に登場した人物たちを探すといますいます!
人物の性格や生い立ちを知っていますから、資料集の年表の中にある名前をみると、「やっぱりそういう乱起こしちゃうよね!その人と結婚しちゃうよね!」といったかんじで親しみをもってしまうのです。年表の中の人物に感情移入、即ち共感できるからとっても面白い。
そのあと万葉集や新古今和歌集を読みましたが、やはり有象無象の藤原氏や天皇一人一人に特別な親しみが芽生えるし、それらが作られた歴史的背景を調べれば、なぜ平安時代の政治体制が生まれたかがわかります。
受験生の時はあんなに無味乾燥とした暗記だったのに、いまもう一度読み返すと色彩を持って歴史がつながっていく。旅した土地がテレビで紹介されると食い入るように見てしまうように、趣味本で読んだことを教科書で見つけると嬉しくなっちゃいますよね。
話がだいぶ逸れたので向田邦子のくだりに戻りますが、共感すること、親しみをもつことが面白みを感じることにつながるようです。
暗記科目に辟易している方は、ぜひ思い切って違う切り口から、なるべく自分が興味を持てる角度から調べ物をしてみてください。
日本史を古典から切り込んだり、理科なら科学者たちの生い立ちから切り込んでみたりといったかんじで!
その結果、教科書に登場するモノ・コト・ヒトに親しみをもって共感できれば、自然とその科目が好きになっていくはずです。
一見遠回りだけど、たまーに絶大な効果を発揮するのではないでしょうか。
担任助手5年 青島健人